邪神大神宮 道先案内(ナビゲーション)
鳥居(TOP)斎庭(総合メニュー)万邪神殿紅葉宮>第十三回 鬼女もみじ祭り(鬼無里)



紅葉紀行 特別編
─第十三回 鬼女もみじ祭り(鬼無里)─



 平成二十四年十月二十一日(日)、長野市鬼無里の松巖寺にて第十三回「鬼女もみじ祭り」が開催されました。私も二年振りの参加して来ました。

 今回は、当神宮の「鬼女紅葉」の記事についてお問い合わせ頂いたことがきっかけで知り合った、こたろうさんからのお誘いにより、二人で参加することになりました。前々回の第五回では大学時代の同級生・siegberg氏、前回の第十一回では大学時代のサークルの後輩・さんとうへい氏とともに参加したわけですが、日頃の旅はほとんどが一人旅なのに、この祭ばかりは、なぜか二人旅で、しかもいつも相手は違う人。全く不思議なことです。
 なお、こたろうさんは和風メタルバンド(ファンに怒られそうな形容ですが、ヨーロッパの「フォークメタル」が好きな私としては、日本唯一の「フォークメタル」であることの敬意を表しての表現です)「陰陽座」のファンで、鬼女紅葉を知ったきっかけは、陰陽座の「紅葉(くれは)」という曲だそうです。陰陽座は主に妖怪伝承をテーマとした楽曲を作成しており、この曲は鬼女紅葉をテーマにしたもので、私も数年前にシングルCDを買ったことがありました。伝説の内部までしっかり踏み込んでいて、感銘を受ける曲でした。こうした現代的な文化を通じて若者にも伝承が伝えられていくことは、素晴らしいことだと思います。

 さて、事前に調べたところによると、今回の会場は、鬼女紅葉の菩提寺・松巖寺で行われるとのことでした。これまで紅葉の屋敷跡・内裏屋敷か、「旅の駅・鬼無里」だったのですが、今回突然寺院内に変更されたのは少々驚きました。もっとも、松巖寺は内裏屋敷と並ぶ紅葉ゆかりの地ですので、ふさわしい場所には違いありません。

 今回、祭りは午前十時~十二時の開催という事で、午前九時半頃、松巖寺にやって来ました。

 祭りはどうやら松巖寺の本堂内で行われるようです。お寺に紅白幕が掛かるのも珍しいのではないでしょうか。

 本堂内は参加者でごった返しております。今回は藁で作った巨大な人面形の「芦ノ尻の道祖神」で有名な、旧大岡村(現在は鬼無里と同じ長野市)の人達が多数招かれていたようです。

 こちらがぞの「芦ノ尻の道祖神」。実は今回、鬼無里に来る前に、この道祖神に立ち寄っているのです。何とも不思議な縁。この写真は今回撮ったものではありませんが(今回は夜明け前だった)、実は、初めて鬼無里の紅葉祭りに参加した際、祭りの始まる数時間前に参拝したときのものです。このときはまだ鬼無里村も大岡村も長野市には組み込まれていませんでした。

 大岡の方々も着席され、間もなく祭りが開始されます。今回も、配布されたパンフレットに祭りの式次第が、次の通り書かれていました。

▼開会行事(午前十時)

▼法要 施主 松巖寺・正福寺
 ○鬼女紅葉 ○官女月夜

▼住職講話・寺院内拝観 [松巖寺住職]

▼アトラクション(午前十一時頃)
○舞踊 「鬼女紅葉」他 河藤比古重社中
            鬼無里民謡おどり
 ○鬼女紅葉太鼓 演奏 鬼女紅葉太鼓保存会

▼きのこ汁ふるまい
▼鬼女紅葉「まんじゅう」進呈(先着百五十名)

 今回、会場が松巖寺だけに、住職の講話が加わっています。また、河藤比古重社中の踊りや、鬼女紅葉太鼓は何度か目にしていますが、「鬼無里民謡おどり」というのは、全く初めて知るものでした。いやはや鬼無里というのは奥が深い。

 松巖寺、正福寺の住職による、鬼女紅葉の法要が始まりました。寺院内で行われているだけに、今までよりも本格的な感じがします。私は元神主であって、元僧侶ではないので、仏教の儀式には詳しくないのが少し残念。ちなみに松巖寺は曹洞宗です。法要の様子は下の動画で。


 法要に続いて来賓紹介・挨拶が行われました。その次は、予定では住職講話だったのですが、変更されてアトラクションに。こういう急な予定変更も、この祭りのローカルさをよく表していて、個人的にはかえって好もしいというか。アトラクションは本堂向かって左の金屏風の前で行われるということで、来賓席が取り払われ、参加者は前に詰めることになりました。それによって、参加者は本堂中央で、ご本尊の前で真横を向いて踊りを見学するということに。こんなシチュエーションはなかなかありません。貴重な体験です。

 まずは、河藤比古重社中の踊りが披露されました。この団体の踊りを見るのは、実に七年ぶり。前に見たのは、旧戸隠村の方の鬼女紅葉祭りでのことでした。こちらの踊りの様子は下の動画から。


 続いて「鬼無里民謡踊り」が披露されました。踊り手は河藤比古重社中とは別のようで、鬼無里の婦人会か何かでしょうか。

 「鬼無里民謡踊り」が続きます。BGMを再生するカセットテープが伸びてしまっているのか、スピーカーの調子が悪いのか、時々調子や音程が大きくズレて異様な音になったりしていたのはご愛嬌。

 ちなみにこの「鬼無里民謡踊り」というのは、はじめ鬼無里に伝わる固有の民謡と踊りかと思ったのですが、全国的に知られている民謡踊りのようです。この写真の通り、花笠踊りなんかも踊られているように。「鬼無里民謡踊り」三演目まとめた動画はこの下。


 そしてこちらが舞踊「鬼女紅葉」。この曲の歌い手は何と水前寺清子さんだそうです。鬼無里から依頼があったのか、はたまた謡曲をテーマにした舞台ででも歌ったのか。踊り手は再び河藤比古重社中の皆様。舞踊「鬼女紅葉」の様子は下の動画から。


 さて、この次はこの祭り最大の見所とも言える「鬼女紅葉太鼓」。しかし、まさかあの太鼓をこの本堂で演奏するのか?と不審に思っていたところ、やはり本堂前の屋外での演奏ということでした。皆さん続々と玄関から表へ出ます。それにしてもこの祭りの予想外の展開には、毎回毎回驚かされます。

 演奏の舞台は、本堂正面の車寄せのようです。なるほど、大きな屋根の下なので、これなら雨天決行も可能ですね。

 まずは一曲目「木曽殿」の演奏から。鬼女紅葉伝説を含めた鬼無里四大伝説の一つ、木曽義仲伝説にちなんだ勇壮な曲。ここ松巖寺は、鬼女紅葉の持仏とともに、義仲の持仏をも祀ると言われ、また裾花川の上流には義仲の守護仏を祀るという文殊堂もあります。詳しくはコチラコチラ。「木曽殿」の動画は下からどうぞ。


 そしていよいよお待ちかねの鬼女紅葉太鼓!舞台の袖では既に平維茂がスタンバっております。

 もちろん、紅葉も待機しています。それでは、下の動画より、鬼女紅葉太鼓をお楽しみ下さい。


 鬼女紅葉太鼓保存会の皆様に、盛大な拍手を!これでアトラクションは全て終了です。

 演奏終了後、境内には「鬼女紅葉太鼓ワゴン」が。鬼女紅葉太鼓を見るのは今回で三回目ですが、このワゴンを見るのは初めてかもしれません。

 珍しくろうそくの火が灯っている、境内の鬼女紅葉のお墓にも参拝。

 本堂に戻ると、きのこ汁がふるまわれていました。これも毎度おなじみのお楽しみ。しかもいつも多めに作られるので、二、三杯は頂いています(笑)。感謝感謝。山国の秋のきのこですからそりゃもう絶品!

 きのこ汁のふるまいとともに、予定変更となった住職の講話を聞かせて頂けるはずだったのですが、住職いわく「皆もう出来上がっちまって話なんか聞けないだろ」とのこと(苦笑) それで一旦は中止となったのですが、大岡の方達も多数いらっしゃるということで、改めて鬼女紅葉伝説や、松巖寺の紹介をされておりました。

 講話も終わって後は自由に歓談となったのですが、そこで聞いた話では、以前は長野市の観光サイドの要請もあって、鬼無里と戸隠で、連続した土日どちらでかぶらないよう、年ごとに交代して行う予定だったそうです。確かに、前回私が鬼無里の祭りに参加した二年前(平成二十二年)は、土曜鬼無里で、次の日曜戸隠という日程でした。ところが、今回は同日の日程。これは、年ごとに鬼無里と戸隠で土日交代のはずが、鬼無里が土曜にやった翌年、戸隠が約束を違えて日曜を譲らず、決裂となったため、鬼無里も日曜にやることになったようです。
 鬼無里と戸隠では、鬼女紅葉伝説ついてはどちらも本家を誇っているなど、相譲らないところがあるので、止むを得ないことかもしれませんね。まあ、それだけ双方地元の伝説に愛着があるということでもありますが。
 なお、住職から直接、十一月にここ松巖寺で、謡曲「紅葉狩」の仕舞上演と、パネルディスカッションがあるとのご案内も頂きました。こちらの住職は、鬼女紅葉祭りの主催者でもあり、鬼女紅葉伝説にまつわるイベントを積極的に推進されている方で、影ながら私も応援させて頂いております。


 何度も参拝した松巖寺ですが、折角なので改めて寺内を拝観しました。祭りの装いを施されているので、常とは雰囲気が違います。

 左奥に、鬼女紅葉の持仏だったという地蔵尊像と、紅葉の戒名「釜岩紅葉大禅定尼位」が刻まれた位牌が祀られています。紅葉討伐後、平維茂がこの地蔵尊を祀ったのが、松巖寺の始まりと伝えられています。

 ディテールが分かりやすいよう、地蔵尊を接写した写真も飾られています。

 地蔵尊の隣に祀られる「紅葉観音」。江戸時代、紅葉を供養するために作られただそうです。今日のように、他地域と違って鬼無里では紅葉を鬼女ではなく「貴女」と尊ぶ風が、少なくとも江戸時代にはあったことを、物語っています。

 この他にも、紅葉の物語を描いた絵巻等、紅葉伝説に興味ある者にとっては垂涎の品々が多数あります。伝説に興味のある方は、是非一度ご参拝下さい。

 やがて、祭りも自然解散。この後は、こたろうさんと、鬼無里の紅葉伝説伝承地巡りをし、例によって「おに屋」で十割そばを食べたりしました。秋になると、毎年鬼無里と「おに屋」の十割そばが私を呼ぶのです(笑)


大きな地図で見る
今回鬼女もみじ祭りが行われた、「松巖寺」の場所はこちらの地図の通り。また、第五回 鬼女もみじ祭り(鬼無里)の様子はこちら、第十一回 鬼女もみじ祭り(鬼無里)の様子はこちら。また約一ヵ月後に同じ松巖寺で行われたイベント「鬼無里へのいざない」についてはこちら



斎庭へ戻る 呉葉門へ戻る 道先案内へ戻る