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土蜘蛛紀行一覧 



土蜘蛛紀行 大和編
其之弐、忍阪
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狭山田女:ここはどこかな?山里の神社だね。
大山田女:ここは桜井市忍阪(おっさか)。葛城とは大和盆地を挟んだ向かい側です。大和盆地の東南、少し山へ入った谷あいの里です。目の前の神社は、生根(いくね)神社という神社です。
狭山田女:まずはお参りしようか。ここは土蜘蛛とどんな関係が?

大山田女:古事記によると、大和盆地入りを目指す神武天皇の軍が、大きな穴倉にいる「尾が生えていた」数多くの土蜘蛛を討ったそうですが、それがこのあたりなのです。詳しくはこちらに書いてあります。
狭山田女:穴倉はどこにあるんだろう。
大山田女:土蜘蛛の長い手足や穴居等の表現は、蔑視による誇張とも言いますから、元々穴倉などないのかもしれません。でもここは地形的に交通の要衝ですから、古代において土着民と王権との間で何らかの争乱はあったのでしょう。神武東征神話では、熊野から大和盆地に至るルートで似たような戦闘が幾つもありますし。また、忍阪は二十六代継体天皇の即位前の宮の伝承地や、その他天皇・皇族の陵墓もあり、古代に重視された地域なのは確かです。

狭山田女:おや、これは拝殿だよね?この神社には本殿がないんだね。
大山田女:同じ桜井市の、古代大和の聖地・三輪山の大神(おおみわ)神社と同じで、神社の古い形式ですね。後ろの山が御神体で、そこには「石神さん」という列石があるそうです。
狭山田女:あたし達も神様も、山の中の大きな岩に宿っているもんね。

狭山田女:こっちの左側の神社は、別の神社かな。
大山田女:こちらは境内社の愛宕神社だそうです。火の神様ですね。その他に、天満神社という境内社があるそうですが、山の中のようでよく分かりませんね。それから生根神社拝殿の右側に……。
狭山田女:あっ、拝殿の右側に、こんなものが!

大山田女:……。
狭山田女:これはいわゆる「陽石」だね。あたし達のふるさとにもあるよね。こういうのも古い信仰の形だね。
大山田女:……。
狭山田女:あれ?大山田ちゃん?どうしたの?もしかして恥ずかしがってる?
大山田女:そ、そんなことありませんっ!!こちらの石は「神女神社」という立派な神様なんですよっ!
狭山田女:わっ、びっくりした。そ、そうなんだ。これで神社なんだね。
大山田女:そうですよ。読み方は分かりませんが、「しんめじんじゃ」でしょうか。
狭山田女:でも名前からして女神様だよね。それで陽石だけってのも、ちょっと変な気もするけど。

大山田女:そうなのです。陰石があるとか、陰陽両方あるとか聞いていたので、探していたのですが、これは陽石に見えますよね。もしかしてこれで陰陽合体している姿なのでしょうか。もっとも、女神は陽物を好むので陽物を捧げる、という信仰もありますから……。
狭山田女:大山田ちゃん、さり気なく結構過激な事を口走ってる気がするけど。
大山田女:さ、狭山田さん!!ま、真面目にやらないと、置いていきますよ!
狭山田女:わぁ~、ごめんごめん。でも山里の小さな神社だけど、古い信仰の形が残ってて驚いたなあ。
大山田女:ここも古くは高い格式を持った神社だったのですよ。先程狭山田さんが言っていましたが、私達の時代には、大きな木や岩や、山そのものを神様の宿るモノとして拝み、そのための建物を建てるということは稀でした。今のように神社の建物の中に神様をお祭りするようになったのは、私達が生きていたよりもずっと後の時代のことです。この生根神社も、大神神社も、そういう古い時代の形を残していて、しかも、どちらも古代には高い格式の神社だったのです。
狭山田女:大神神社は、今も有名な神社だよね。
大山田女:そうですね。どちらも同じ市内にある、古い信仰の形を伝える、格式の高い神社ですが、それだけでなく、実際に生根神社と大神神社には、深い関係があるようです。古文書の中には、生根神社は大神神社の「御子神」と伝えるものもあります。
狭山田女:へぇ~、そりゃあ本当に深い関係だ。
大山田女:でも、生根神社の祭神・少彦名命(スクナヒコナノミコト)と、大神神社の祭神・大物主命(オオモノヌシノミコト)は、神話上、親子関係ではないのですけどね。ただ、両神とも、出雲の主神・大国主命と深い関係にあります。少彦名命は大国主命とともに国造りを行った神様で、ペアで祭られていることも珍しくありません。また大物主命は、大国主命の守護神のような存在で、よく大国主命と同一視されます。しかも、神話では、少彦名命が去って、途方に暮れる大国主命の前に、大物主命が現れるのですが、この絶妙なタイミングからして、少彦名命と大物主命の間には、非常に深い関係があるでしょうね。


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狭山田女:そうかあ。そう聞くと、大神神社にもお参りしたくなるなあ。
大山田女:そうですね。せっかく同じ桜井市まで来たのですしね。忍阪の生根神社の場所は、左の地図を参照して下さいね。



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