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土蜘蛛紀行 筑後編
其之壱、山門─ニ、女山神籠石(中)
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狭山田女:おおーっ、女山の山頂はこんなに見晴らしがいいんだ。
大山田女:こちらは南西の方角ですね。あの光り輝いているあたりは、有明海ですよ。もっとよく見てみましょう。

狭山田女:どこかの河口が見えるよ。有明海かあ。意外に海に近い場所なんだね。
大山田女:海岸線まで最短で十三キロ程度ですから、それほど遠くはありませんね。

狭山田女:真正面は一面の平野だね。田んぼや畑の中に集落がある感じかな。
大山田女:こちらは西の方角。古くから「山門」と呼ばれてきた地域は、今麓に見えている平野を中心とした地域ですね。筑後平野の南部です。平野は、筑後川を越えて佐賀平野まで続いています。筑後平野と佐賀平野を合わせて、筑紫平野とも言いますね。

狭山田女:佐賀かあ。あたし達の故郷まで……。
大山田女:こちらは北西ですが、平野の向こうに山脈が見えるでしょう。この平野のずっと向こう、あの背振山地の麓に、私達の山田の里があります。山田の里までは、直線で二十八キロくらいですね。「土蜘蛛の国」肥前とは、筑紫平野や有明海を挟んで向かい合っているような感じですね。

狭山田女:こっちは北か。こっちにも平野が続いてる。
大山田女:西から続く背振山地が途切れて、その少し左から、また山が東へと続いていますね。東西の山の間は割と平坦で、大宰府があり、その北は福岡、博多へ続いています。また平野から筑後川を東へ遡れば、豊後、大分県の日田。土蜘蛛の伝承がありますね。日田までは約四十キロメートルです。

狭山田女:うしろは山だ。
大山田女:東ですね。こちらにはずっと山が連なっており、九州山地にまでつながっています。九州の北東から南西にかけて走る「九州の背骨」ですね。山並みをたどっていけば、阿蘇、霧島にまで行く事が出来るでしょう。かなり険しい道のりですが。

狭山田女:南も山だけど、西へ低くなってるね。向こうにも別の山並みがある。
大山田女:ここは筑紫平野の東南の端に当たっており、西、北に向かって低くなっているのです。南の山並みを越えれば、肥後、熊本県。肥後にも土蜘蛛の伝承がありますね。肥後最北の土蜘蛛伝承地・玉名郡まで最短で十キロ程、玉名市までは二十五キロ程です。

狭山田女:いやあ、眺めのいい場所だなあ。景色を見ながら大山田ちゃんの話を聞いた感じじゃ、ここは九州の交通の要衝って感じがしたけどね。
大山田女:そうですね、九州の東西南北、いずれにも通じる場所と言えるでしょう。邪馬台国九州説の最有力候補地というだけの事はあると思います。田油津媛さんが勢力を持っていたとか、討たれたとかいう話があるのも、この交通の利便性と無関係でないでしょう。さて、では山を下りつつ、もう少し神籠石をよく見て行きましょうか。

狭山田女:あ、こんなところに案内が。これが神籠石内にあるっていう古墳か。こんな山の頂上近くにあるんだね。六世紀後半に築造って、神籠石より古いって事か。神籠石は七世紀築造って書いてあったもんね。
大山田女:こういうところが、神籠石の謎なのですよ。本当は神籠石も古墳と同じ頃か、それ以前からあったのかもしれません。

狭山田女:確かに、女山から出てきた銅矛は古墳よりもさらに古い訳だしね。少なくとも、ずっと昔から、矛を埋めたり、お墓を作ったりする、特別な山だったって事だね。おっ、石室もちゃんと残ってるんだ。
大山田女:列石によって山城化したのは後の事だとしても、女山という場所が相当古くから聖地であったのは間違いないでしょう。

狭山田女:それこそ、田油津媛さんの頃からね。おおっ、石室の中も覗けるよ。
大山田女:その意味では霊域説も間違いとは言い切れないのですよね。古墳が集中している山など、霊域そのものですから。列石と古墳とて、全くの無関係というのも不自然ですしね。石室も麓の山門に向いていますし、「先祖が里を見守る山」という位置付けがあったのでしょう。

狭山田女:お~、石室の中はこんな感じなんだね。しかしこの山にもいっぱい古墳があって、麓にも古墳があって、山門ってのは古墳だらけの場所だね。
大山田女:そのあたりも邪馬台国だと言われる理由の一つなのでしょうね。

狭山田女:こっちにも古墳があるよ。こっちが一号墳て事は、さっきのが二号墳なのか。二基あるって案内に書いてあったもんね。
大山田女:こちらの古墳は、上部の盛り土、いわゆる「封土」がかなり消失してしまっているようですね。

狭山田女:本当だ。でもおかげで上から石室を眺められるんだ。ちょっと面白いね。
大山田女:封土だけでなく、石室の天井石もなくなってしまったのでしょうね。

<狭山田女:こうやって見ると、どこかの街の廃墟みたいだなあ。
大山田女:そうですね、お墓の廃墟、というところでしょうか……おかしな言葉ですが。さて、それでは一気に山を下って、神籠石のもう一つの見所、水門に行きましょう。



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