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土蜘蛛紀行 大和編
其之壱、葛城─ニ、一言主神社
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狭山田女:ここが、一言主神(ヒトコトヌシノカミ)を祭っている、一言主神社だね。
大山田女:古事記や日本書紀に、二十一代雄略天皇の一行が、葛城山で天皇の一行と全く同じ姿・人数で現れた一言主神に出会う話があります。また、そこで自ら「悪い事も善い事も一言で言い放つ神」だと名乗っています。先程事代主神(コトシロヌシノカミ)と同一視されることもあると言いましたが、事代主神もやはり託宣、つまり神の言葉を伝える神で、名前も役割もよく似ているのです。
狭山田女:託宣かあ。シャーマンがやる「神のお告げ」だよね。シャーマンに乗り移る神様なのかな。土蜘蛛にはシャーマンが多いけど、そのへんも共通点があるよね。よし、まずはお参りしよう。

大山田女:こちらの案内に詳しく書かれていますね。実は古事記と日本書紀では一言主神に対する雄略天皇の反応が違います。古事記では天皇が恐れ畏まるのですが、日本書紀では一緒に狩を楽しんでいます。もっと後の続日本紀では天皇が無礼に怒り、土佐に流しているのです。
狭山田女:ひえぇ~、神様を流刑にしちゃうんだ。

大山田女:実はここで、続日本紀は一言主神ではなく「高鴨神」と書いているんですが、何にせよ、時代を追うごとに、どんどん酷い扱いになっています。それには、この神を祖神とする賀茂氏の地位が下がっていったことと関係あるようですが。
狭山田女:これが拝殿だね。こんな話してたら神様怒るかなあ。

大山田女:ですが、古くは天皇もひれ伏す偉大な神だった訳です。
狭山田女:天皇よりも偉いってことだね。そのへんは何だか「葛城王朝説」を信じたくなるね。
大山田女:そうですね。朝廷が、時間を掛けて少しずつ「葛城王朝」の痕跡を消して行こうとしたのかもしれません。または奈良時代くらいに、「葛城王朝」の痕跡を消して行かなければならないような、政治的な動きでもあったのかも。奈良時代は、激動の時代ですからね。さて、お参りが済んだら、拝殿の右脇に行ってみましょう。

狭山田女:この石は……? あっ、これが「蜘蛛塚」なんだ!
大山田女:そうです。土蜘蛛の住んでいた場所であり、お墓でもあります。葛城の土蜘蛛に関してはこちらを読んで下さい。一言主神のことも書いてあります。

狭山田女:高天にあったのと、どう違うんだろう。
大山田女:この案内に書いてありますが、こちらは謡曲「土蜘蛛」に出てくる土蜘蛛です。謡曲は、能と同じと思っても構いません。能の「土蜘蛛」です。
狭山田女:平安時代の武将・源頼光(ミナモトノヨリミツ)が、大蜘蛛の妖怪に苦しめられて、部下が退治する話だね。

大山田女:高天のほうも大蜘蛛の妖怪ではありましたけど、頼光は関係なく、天皇が悩まされ、勅使が討つという話でした。話の内容を考えても高天のほうが古そうですし、高天という場所は非常に神聖視されていた場所ということもあって、あちらのほうが重要そうに思えるのですが、こちらも葛城を代表する神社ですし、無視できないですね。

狭山田女:かつては天皇もひれ伏した神様を祭る神社の境内だもんね。一言主神が落ちぶれて行く所なんかも、土蜘蛛と近いところがあるし。
大山田女:土蜘蛛も人から妖怪へと零落して行きますからね。葛城の土蜘蛛のルーツは、一言主神と同じなのかもしれません。祖先と子孫の関係にあったかもしれないし、土蜘蛛が崇めていた神が一言主神なのかもしれないし、同時代の同族なのかもしれないし、あるいは同一なのかも……。
狭山田女:そうかあ……。ともかく、この土蜘蛛は同胞には違いないね。安らかに眠り給へ……。

大山田女:その一言主神は、高鴨神と同一視され、賀茂氏や「葛城王朝」にもつながって来ます。
狭山田女:葛城の土蜘蛛って一体……ん、この碑は?
大山田女:万葉集の歌碑ですね。この碑にある葛城氏は、大和王権に先行したという「葛城王朝」よりも後の時代の話ですが、それでも大王に並ぶほどの強大さだったようです。

狭山田女:その葛城氏も、「葛城王朝」と無関係じゃなさそうだね。
大山田女:そうでしょうね。ちなみにここに出てくる葛城襲津彦(カツラギノソツヒコ)は、葛城氏の始祖で、記紀に出てきますが、日本書紀に引用される形で百済の書物にも現れ、記紀の中でも実在性の高い人物とされています。歌の通り、強力な武人だったようです。

狭山田女:でも、そんな葛城氏も落ちぶれちゃったんだよね?
大山田女:記紀によると、皇位継承争いに巻き込まれて、滅ぼされています。しかも、一言主神と出会う前の、即位前の雄略天皇によって。
狭山田女:そりゃあ間違いなく一言主神の話と関係あるよね……。あ、これは立派な御神木。
大山田女:「乳銀杏」という、樹齢千二百年の銀杏です。千二百年前というと、ちょうど、一言主神について書かれた続日本紀が完成した頃です。この御神木なら、少しは真実を知っているかもしれませんね。
狭山田女:ところで一言主神といえば、修験道の開祖、役小角(エンノオヅヌ)とも関係があるんだっけ。

大山田女:役小角は、古事記や日本書紀が出来た頃に生きた人ですが、世間を惑わしているという理由で、伊豆に流刑になっています。平安時代に書かれた日本霊異記では、役小角は賀茂氏の出身であり、数々の鬼神を使役して、土木作業を行ったとされています。その鬼神達の中に一言主神がおり、使役されることに不満を抱いて、人に乗り移って、小角が謀反を起そうとしているという讒言をします。小角は一言主神を呪法で葛城山の谷底に縛り、それは今でも解けない、という話です。
狭山田女:とうとう一言主神は邪神にまで堕ちてしまったんだね。でも、一言主神は賀茂氏と一緒に落ちぶれていってるのに、この話だと賀茂氏の役小角が一言主神を苦しめて、それが原因で一言主神が賀茂氏の役小角を苦しめてと、足の引っ張り合いだよね。内輪揉めでもあったのかな。
大山田女:どうなのでしょうね。日本霊異記に書かれているくらいなので、かなり古い伝説ではあるのですが、何かが間違って伝わってしまったのかもしれませんし、何とも言えません。小角が開いた修験道というものは、山岳信仰であって、山に住む人々と非常に深い関わりがあるのですが、そういう「山の民」は、土蜘蛛のような、後世化物とされてしまう、朝廷支配に服さない人々と、深い関係もあるのです。
狭山田女:化物っていうところだと、小角も「鬼」を使役してるもんね。
大山田女:後世、強力な妖怪として知られることになる「天狗」なんかも、修験道と深い関係がありますしね。日本霊異記の「小角の謀反」というのも、そういう朝廷支配に服さない人々と関係あるのかもしれませんが、修験道によって「山の民」が再編成され、新しい文化がもたらされたような向きもありますので、山岳民の中にもそれに反発する動きがあって、一言主神と小角の対立というのは、そうしたことの反映なのかもしれませんね。
狭山田女:う~ん、なるほど。朝廷に従順じゃないとか、鬼とか天狗とか、何だか土蜘蛛とも深い関係がありそうだねえ。平安時代に一言主神が葛城山に封じらてるって話があって、その後に葛城山に住む妖怪の土蜘蛛退治の話があるっていうのも、気になるし……ますます一言主神と土蜘蛛がダブってくる。

大山田女:帰りは駐車場の方へ降りていきましょう。
狭山田女:ん?この石は?
大山田女:これは亀石と呼ばれている石で、小角が、災いをもたらす黒蛇を封じたものだと言われています。一言主神の伝説としては、小角に黒蛇にされて谷底に捨てられ、今は恨む気力もない、というものもあるのですが、それとも関係がありそうですね。



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狭山田女:なんだか可哀想になってくる伝説だね。でも、一方ではこうやって今も信仰を集めてるんだから、一言主神っていう神様は、不思議だねえ……。
大山田女:では次は、一言主神社の後ろにそびえる、その葛城山に参りましょう。小角が修行した山でもあり、かつて山頂に一言主神社が鎮座していたともいう山です。一言主神社の神体山でもありますね。一言主神社の場所は、左の地図を参照して下さいね。



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